Collection: Ben 一押し

美術学校に通っていたとき、自分のメモリー(思い出)を香りにしてほしいとある調香師に頼んだことが始まり。そのとき、パーソナルな思い出だったこともあって感動したんだ。目に見えないもの(=香り)がここまで感情をかき立てることができるのかと。それがきっかけで香りを作ろうと思った。特に、自分はそれまで美術を学びとても視覚的な世界にいたから、見えないものにここまでのパワーがあることに感心したんだと思う。

今まで25種類ほどの香水を手掛けてきたが、一番最初は(記憶の中の)父親の香りをイメージした。とてもパーソナルな香りだけど、父親(もしくは父親像)の香りって誰もが共感できるものだろう?香りを作るとき、そういったパーソナルな記憶や人をイメージして作ることが多い。記憶と香りはとても密接なつながりがあるから。そしてそれを香ることによって人が共感しあい、つながってほしい。

まず、どの香りでも一つのストーリーを描くようにしている。それがパッと思い浮かぶときもあれば、そうでないときもある。でも13年も香水を作っていると自然に鼻が敏感になるから、考えなくとも毎日の生活の中にある香り全てが刺激になる。例えば先ほど(ホテルで)シャワーを使ったときに、アメニティーの小さな石鹸が強い印象として残った。新しい土地を訪れる際、普通は景色(視覚)や気温(触覚)などが記憶になると思うけど、私はそれらと同じくらい香り(嗅覚)が記憶になっている。印象的な香りはノートに書きためて、ノートを見返したときに何度も似た香りが出てきたり、思いが強かったりすると、そこからその思いを調香師に伝えるためにアイデアソースを集める。それは詩だったり、写真だったり、オブジェクトだったり……。そこから調香師と会って、実際の香料の製作作業に入るんだ。香水作りにはだいぶ慣れたが、いまだに難しいと思うのは、誰もが共感できるような”客観的”な香りを生み出すこと。でもその難しさが楽しいんだよね。チャレンジングだからこそクリエイティブなものが生まれるだろうね。

エムエムパリス(M/M PARIS)とコラボした「M/MINK」という香りはチャレンジングだったかな。特殊なカリグラフィー(書道)のインクをイメージした香りなのだが、インクの香りを表現するのって意外と難しくて。インセンスやアンバー、パチュリリーフ、ハニーなどをブレンドして作ったけど、かなりの自信作だよ。


香水を作る経験も知識もなかったし、最初はほぼ独学で香りを作っていたので大変なこともあったけど、かえってユニークなものを作れていると思う。トレーニングや学校などで「これが正解」というようなことを教えられていないので、自由に香りを作ることができるし、真にユニークでパーソナルなものばかりを生み出していると思うよ。

もともとは香りに集中してもらいたいという思いがあり、香りが主役でパッケージはある意味脇役と考えていた。つまり、外見よりも中身に注目してほしかったんだ。でもそんなパッケージも時間をかけてデザインをしているし、ディテールにもこだわっている。ガラスの工場にも足を運んで、シンプルながら高いクオリティーのパッケージを作っているよ。

いい質問だね。タイミングかな?ちょうど「バイレード」がデビューしたとき、ニッチなパフュームメゾンの市場が伸び始めていたから、それは大きい。特に若い世代は香りで自己表現をする人が増えているし、ユニークな香りにもどんどん挑戦している。あとは幅広い層に支持を得ているから。18歳の顧客もいれば、85歳の愛用者だっている。それはシンプルな香りだからなのか、センスなのか、どちらか言い難いけど。

もともとアートを学んでいたので、視覚的なものにももちろん興味があったんだ。香りは見えないがアーティスティックな表現ができるものとしてずっと作ってきたけど、久しぶりに見られる・触れるものを作りたいと思ったのがきっかけかな。ファッションショーに招待されることも多いし、ファッションデザイナーの友人も多くいるから、インスピレーション源は常に周りにあるしね。中でもレザーグッズはタイムレスだし、ブランドを上手に表現をできるものだと思って選んだ。

 

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